就職活動ナビに関わる仕事
募集職種の内容が十分に紹介されなかったため、会社が職種ごとに求める人材のイメージと実際に応募した学生とのあいだにギャップが生じたのである。
そこで二年目以降はパンフレットやビデオによる詳しい職種紹介を行うといった工夫を行った。
一年目は通常とは別枠による職種別採用だったが、二年目からはすべての新卒者を公開試験によって採用する方式に変更。
これによって、従来型の新卒採用は、内定後の面談によってキャリアを決める「オープンコース」という職種別採用の中の一コースとして組み込まれることになった。
この職種別採用で忘れてならないのは、人事部だけで選考を行うのではなく、その職種の担当部門がダイレクトに関与することである。
ソニーでも、職種別の面接が行われる二次試験以降は人事部がタッチせず、内定の段階まで担当部門が責任を負うというスタイルで選考作業が実施された。
人事部主導だと、結局はかってのように無難な同質型人材を選びがちになる。
各部門が責任をもって選考すれば、より現場のニーズに応じた多様な人材を見出すことができる人材を社外に求め、即戦力として活用することを狙った新しい試みである。
応募者はAコース(月額一○○万円)からDコース(月額四○万円)まで二○万円刻みで四段階に分けられたコースの中から自分の月給を選択できる。
もちろん、ただ高額な給料に魅力を感じているだけの応募者も少なくなく、それを振るい落とす意味でも選考基準や選考プロセスはきわめて厳しい。
応募から採用決定まで二カ月以上を費やすことだけを見ても、その厳しさを窺い知ることができるだろう。
その厳しい選考をパスして採用された社員は、一般の中途入社組と区別するために「脳動体社員」と呼ばれ、入社後二年間は選択した給与が保証される。
その後の給与は業績に応じて見直され、より上位のコースへステップアップする者もいれば、下位コースに転落する者も出てくるのでまさに、従来の日本企業では考えられないほどの徹底した実力主義だといえる。
職種別採用に似たシステムとしては、日本航空が一九九二年入社の新卒募集から実施している「タイプ別採用」というものがある。
職種別採用が応募者の意向と会社の既存業務との最適化を図るのに対して、日航のタイプ別採用は募集するタイプをあらかじめ四つに分類して多様な人材を獲得することを目的としている。
そのタイプとは、「行動派」「論理派」「バランス派」「個性派」の四つ。
それぞれに適した具体的な業務を挙げれば、行動派は営業職、論理派は運行統制部門、バランス派は総務や労務などの職種別採用をさらに進化させ、応募者の希望に一○○%応じる体制を整えている企業もある。
一九九○年の春から「ジョブ・リクエスト制」を導入した住友ゴムエ業がそれだ。
ソニーの職種別採用とは違い、配属先の希望は入社後三カ月間の研修を経て正式配属される前に提出される。
それだけ社内の業務に関して熟知できるわけで、より具体的に希望部署を選ぶことが可能になるわけだ。
管理部門、個性派は新規事業の開発といったことになる。
この各タイプにそれぞれ三○%、二○このタイプによって入社後の配属先がすでに決まっているというわけではない。
そこがソニーのような職種別採用と異なる部分だといえる。
あくまで会社全体として多様な人材をある程度の割合で揃えよう、という発想に基づくシステムなのである。
希望のしかたは基本的に本人の自由である。
部門は問わずに営業や開発という横断的な職種を希望することもできるし、逆に職種を問わずに部門単位で希望することもできる。
あるいは両者とも限定して、「タイヤ事業部の営業」とか「スポーツ事業部の開発」といった特定部署を希望することも許されているのである。
会社側は、そうした本人の希望にできるかぎり沿うかたちで配属を決める。
その結果、希望どおり配属される者が八○%以上もあり、第三希望まで含めれば一○○%の者が自ら選んだ部署に配属されているという。
新入社員の希望に耳を傾ける企業は多いが、それをここまで汲み取るケースはきわめて稀である。
それだけ新入社員の希望職種に対する主張が明確になっており、それを無視することが重大なモチベーションダウンにつながることを、関係者が敏感に察知したのだと思われる。
その証拠に、住友ゴムエ業ではすでに一九八六年の時点で、入社四年目と七年目の社員を本人の希望によって配属する人事制度をいち早く導入している。
個人のスキルや適性を重視するという意味では、今後もきわめて高い効果を期待できるシステムである。
一方、新卒の一括採用へのこだわりを捨てて、定期的に中途採用を行う企業も続々と現れている。
とくに、嘗ては最も新卒に固執していた銀行や商社までが積極的に中途採用に取り組みはじめたことは注目に値する。
その中でも一九八五年から定期的中途採用を始めた住友信託銀行のケースは、旧弊を打ち破る試みとして評価されていい。
「中途採用者は、職歴を経て技能や仕事に対する考え方が確立しており、新卒とくらべて当たり外れがない」というのが人事部の考え方のようだが、それにしても元来が保守的な銀行が、質的にも量的にもこれだけの人材を外部から取り込むというのは画期的なことだ。
中途採用に関しては、これ以外にもソニーやアサヒビールなどが定期的に実施し、年一回、中途採用者のための入社式を行っている。
もう、中途入社組は例外的な存在ではない。
家族としての一致団結を求め、純血主義を振りかざして中途入社を拒絶する時代は、すでに過去のものになったのである。
まず量的な面では、八五年から五年間で一五九名もの中途採用を行っている。
しかも、その出身業界が実にバラエティに富んでいる。
金融が三六名と最も多いのは当然として、それ以外にメーカー二一○名、建設・不動産三○名、コンピュータソフト一三名、商社九名、マスコミ六名と、まさに異質な能力と文化を大胆に取り入れているのである。
さらに人事部では「よい人材が応募してきて、その能力に見合うポストがふさがっていたら、いまの社員を動かしてでも採ることにしている。
異質文化を取り入れる意味でも、新卒と並んで採用の柱にしたい」とまで公言している。
それだけ、多様な人材を必要とするヒューマンワーク時代の到来を肌で感じているに違いは、今の中途採用者は「甘く見る」で生きてくる個人のスキルや適性を重視する採用の新しいシステムを紹介してきたが、これから企業に求められるのはこうしたシステムを作り上げることだけではない。
そのシステムを正しく運用しなければ、目的を達成することはできないのだ。
正しい使い方を知らなければ、どんなに優れた道具を作っても無意味である。
職種別採用やジョブ・リクエスト制によって多様な人的資源を獲得した場合、その人材を入社後も同じ方針でフォローしていくことが重要になる。
せっかく能力の高い多様な人材を手に入れても、入社してから旧来の年功序列的な一律型マネジメントによって管理したのでは、採用段階での趣旨が殺されてしまう。
採用された側にしても、現場で働きはじめた途端に〃家族″として画一的な価値観を押しつけられたりしたら、それこそ「聞いてないよ」的な不平不満を抱くようになるだろう。
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